煙に関するビデオで仕掛けた間違い + あなたの胃に関する課題

先週我々は最初の動画をリリースしました。覚えていらっしゃるかと思いますが、最後に我々は動画に仕掛けた間違いを見つけるようお願いしました。本日は、我々が仕掛けた間違いを調査しましょう。そのうちの幾つかは芸術的な理由で仕掛けました。他の化学者達が我々に間違いだと指摘した幾つかの場合は、実際には間違いではありませんでした - ここでは個々の詳細は直感的ではなかったため、多くの人々は我々が述べたような反応過程が正確に発生したことを信じませんでした。また、化学者がどのように分子構造を発見するのかについても教えましょう。


動画は何に関するものであったかを思い出しましょう。塩化水素とアンモニアの気体が結合したとき、どのように煙が発生するのかを我々は示しました。我々はまたそれは単に外部からやってくるものではないことも示しました:

外部からの反応

しかし内部では、個々の分子がどのように相互作用し結晶を形成し始めたかを示しています。

内部からの反応

最も簡単な間違いから始め、その後でより難しいものに取りかかってみましょう。

間違い #1: 幸運すぎる

我々の興味を引いていた動画の中の分子衝突率を上げなければなりませんでした。例えば、この動画のこのパートをご確認ください:


ご覧のように、塩化水素 (HCl) およびアンモニア (NH3) 分子が次々と衝突しています。この動画では時間は1兆倍でスロー再生されていることにご注意ください。さもなければ、分子が狂ったように駆け回り、我々はそれらを見ることができないでしょう。このような短期間で個々の分子の衝突を見ることができる確率は国営宝くじに10回連続で当選する確率よりも低いものです。さらに、それら分子がお互いに向かって直接移動する様子もご覧ください :) これはランダムな動作ではありません。

しかし、我々はそれらの間違いを芸術的な理由で仕掛けました。もし我々が実際どのようにそれが発生するのかその過程を示したならば、我々の関心であった分子衝突を見るために何年もの月日を費やすことになるでしょう。この動画は1兆倍でスロー再生されているということを覚えておいていただきたい!これはあなたが一生をかけてこれを視聴したとしても、反応のうち 0.001秒さえも見ることができないほど遅いものです。しかし、もし動画をスロー再生しなかったならば、あまりにも分子移動が速すぎるためにそれらを見ることはできないでしょう。

当社の開発者であるミハイルは特別な”幸運”調整器を規則に持っています。この調整器は映像を美しくするために必要なイベントの確度を上げます。これは分子衝突だけではなく、小さな結晶のためにも同様に使えます。

私のお気に入りの映像 “細胞内部の生命”の著者は視覚効果のために厳密な正確性を犠牲にすることで同様の問題に直面しました。彼らのケースでは、大量の空きスペースを追加しなければなりませんでした。現実には、物質は細胞内部にすし詰めになっていて、木を見ることはできても森を見ることはできないようになっています。

間違い #2: 簡略化された過程

芸術的な理由で我々が仕掛けたもう一つの不正確さは、段階的に反応段階を示したことです:

  1. 最初の塩化水素 (HCl) とアンモニア (NH3) 分子がお互いに衝突します。
  2. その後、結果として生じた HCl-NH3 分子は小さな複合体を形成するために衝突します。
  3. その後、個々のそのような複合体はより大きな複合体を生成するために衝突します。

実生活では、これらの全ての過程は無作為な順番で同時に発生します。

間違い #3: 塩化アンモニウムの構造は結晶化の過程で変化する。

塩化水素分子 (HCl) がアンモニア分子 (NH3) と相互作用する際に、新しい分子である ClH-NH3 が生成されます。動画の中で、我々はそれを “塩化アンモニウム” と呼びましたが、実際には正しくありません。多くの化学者達が、我々がこの分子構造の中に間違いを仕掛けたことを伝えてきました。1個の水素原子が塩素から窒素へ受け渡されるのであれば、正しい分子構造は Cl-NH4 でなければならないことを。水溶液中または結晶の形では、そうなりますし、正しいと言えるでしょう。それでもやはり、気体ではそうではありません。気体では、この分子の構造は我々が示した通りです。

どのようにして我々はこれを知ることができるのか?しかし、一般的に、化学者は分子構造とは何であるかを知ることができるのでしょうか?結局のところ、分子中の個々の原子を”見る”ことができるような顕微鏡は存在しません。これをなし得るような2つの方法に関して非常に簡潔な説明を行ないます。

実験

何らかの分子構造についての情報を我々が知り得る幾つかの実験があります。例えば、吸収および発光スペクトルは分子がどのような構造をしているのかについて有益な情報を与えてくれるでしょう。

理論

人は分子構造を説明するのに必要とされる基本原則を全て知っています。それは量子物理学の法則です。全ての分子のためにシュレーディンガー方程式を書くことができます。その解は我々が分子構造を見つけるのに役立ちます。さあ、解決しなければね ;) しかし、それは容易なことではありません。容易ではありませんが、可能なことです。非常に大きな分子のシュレーディンガー方程式の数値解を求めるためのアルゴリズムがあります。この手法はab initioと呼ばれています。あなたが見つけたソリューションが正しい事を確実にするために必要な、そのような正確な計算を行なうことができるでしょう。多くのプログラムを使ってそのようなab initio 量子化学計算を行なうことができます。これは50年前は夢でしかありませんでしたが、今日ではPCで適切な大きさの分子の構造をほぼ見つけることができます。

我々のケースに立ち返ってみましょう。我々はab initio 量子化学計算法を使って分子構造を調査しました。こちらに 様々な条件下での分子構造の研究に関する良い記事があります。記事に掲載されている結果の一つは、追加の水分子が含まれていない場合、水素原子の移動が発生しないことを示しています。ここで我々の動画には間違いがなかったことになります。

しかしながら、別の場合には間違いがあります。では、誤りがないのにいかにして人を誤解させうるのかを教えましょう。結晶中で個々の分子がどのように結合しているのかを考えてみましょう。結晶の形では、先に言及したような水素原子の移動が発生します。NH4 は塩化アンモニウム結晶中では塩素原子に囲まれています:

塩化アンモニウムの結晶構造

しかし、それは内側の層だけで発生します。外側の層では、水素は未だ塩素分子の近くにありますが、窒素は”まだ”そこから水素原子を奪い取っていません。我々はこの違いを示しました:

結晶中の水素原子の移動

しかしながら、この事実を強調しないように我々は重要な間違いを仕掛けました。我々の動画では結晶は小さく、ほぼ外側の層全体を構成しています。このため重要な過程である水素原子の移動についてはほぼ示されていません。真実を見せることで我々は人々を誤解させるのです。この動画によって彼らは、極めて外の層に限っては真実だと言えるのですが、塩化アンモニウムの結晶がHClとNH3から構成されていると考えてしまうのです。私はこれは我々の動画の中で最も重大な間違いであったと思います。我々は閲覧者の誤解を避けるよう努力を続けていくつもりです。

その他

ここに研究上、ひとつ興味深い点があります: 水蒸気を含む空気で、これらの水分子が気体反応の際に重要な役割を果たしている可能性があるということです。我々は水蒸気が実験結果にもたらす影響についていかなる重要な役割も果たしていないことを確認するため、絶対乾燥状態での実験を行なおうとしています。

おまけの問題

我々の目下のおまけの問題は既に言及済みの塩化水素 (HCl)に関するものになるでしょう。塩化水素の水溶液は塩酸と呼ばれます。ご存知かもしれませんが、我々の胃の中で作られている酸です。

そして質問は次のようなものになります: もし我々が同濃度の塩酸を測り取り、そこに肉片、パンや林檎のかけらを置いたら一日後に何が起こるでしょう?どれがより速く腐敗するでしょうか? 私は実験を開始しています:

塩酸中の食物

次の投稿では、この食物に1日のうちに発生した事をお知らせします。きっと結果に驚かれると思います。どう思いますか?